「晩春」
という映画の終盤において。
笠智衆さん演じる周吉が娘紀子(原節子)の結婚式のあと、紀子の友人アヤ(月丘夢路)と寿司屋で談笑するシーンがある。そこでアヤが周吉に
「おじさん、再婚するの?おやめなさい、そんなもの」
「あぁでも言わないと紀子が、うん、と言わないからね」(こんな感じのやりとり)
周吉が後妻を娶ることに反対のアヤは周吉の嘘を知り、いきなり周吉の額に口付けをした。
嘘をついてでも娘紀子をそろそろ嫁に出さねばならぬ父心。それほどまでに娘紀子は自身の結婚について反対であった。
紀子という女性は父親の周吉が大好きで仕方がない。紀子は自身のお見合い話が出ても
「わたしが行ったら困るんです」
となかなか首を縦に振らない。そんな娘に周吉は、自分も再婚するから、と紀子を説得する。紀子は後妻というものにたいして「汚らわしい」と考えてしまうほど潔癖な性格であったが、最終的にはその父も許し、自分の結婚も受け入れる。
友人のアヤは紀子からいろいろと相談をうけ、周吉の再婚するとききやはり「汚らわしい」などと考えていたようだ。それで紀子の結婚式後の寿司屋で、周吉の再婚話が嘘と知り、周吉に対しどのような感情をもったのか定かではないが、周吉の額に口付けをしたのである。
そのときの周吉の表情が、まさに目が点、といった感じで、演技なのか素の表情なのか、と考えてしまうほどに印象的な表情をするのである。
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