「自分が育てた子供よりもいわば他人のあんたの方がよっぽどよくしてくれた。いやぁ、ありがと」
映画「東京物語」において、平山周吉(笠智衆)が戦死した次男の嫁紀子(原節子)に向かって言ったセリフである。
1953年に公開された映画で、約一年前まで日本は連合国軍統治下にあった。戦後の東京といったら焼け野原で・・・といった印象で黒澤明監督の「静かなる決斗」の雰囲気が自分のなかでは強くある。
東京物語中の東京は焼け野原はどこにも見受けられず、大都会といった風で、尾道で暮す老夫婦平山周吉・とみが東京で成功した子供達を訪ねて上京する。
上京した当初は子供達も歓迎していたが、東京での自分達の生活もありなかなか両親を東京見物にも連れて行けない。戦死した次男の嫁紀子が義理の両親たちを東京観光に連れて行き、その行き届いた心遣いに周吉・とみは感謝する。
紀子は夫の戦死以後ずっと一人を貫いており、周吉・とみが
「そろそろどうだね」
と再婚を勧めるも紀子は
「いいんです」
と再婚の意思はないことを微笑をうかべつつ断る。
このあと両親は熱海へと行き、とても静かでいいところだ、などといって満足したふうだったのだが、夜になると若者達が徹夜でマージャン等でうるさくて眠れない。そして、尾道へ帰ることを決意する。
全体的にたんたんと描かれており、本当にその当時の日常なんだとおもう。その日常のなかに、印象に残るセリフがちりばめられており、何度みても飽きない。オープニングに流れる音楽を聴いているだけでも意味もなく鳥肌がたち感動できてしまう。時間がないときはyoutubeにアップされている東京物語の予告を観て満足している。
冒頭の「自分が育てた子供よりも~」は自分のなかでは物語の頂点で結晶化したもののようにおもえ、あのセリフのためにつくりあげられたといっても過言(個人的に)ではないとおもう。
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